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学生時代はお金に恵まれませんでした。大学四年間の学費は、両親から出してもらったものの、大学卒業を控えても就職活動はしませんでした。まわりの友人たちは次々と、就職先から内定をもらっているというのに、日雇いのアルバイトばかりしていました。それは大学院へ進学するつもりだったからです。両親は、私立大学の四年間の学費を払った上、大学院の学費まで出してはくれません。さらに悪いことには、進学先の大学院が県外にあったため、下宿のアパートも必要になってしまったのです。学費と下宿代を工面するため、アルバイトに明け暮れていました。
結局、大学院在学中に同級生とは遅れて就職活動しましたが、当時は就職氷河期でした。就職活動に失敗し、一年間の就職浪人生活を送りました。
どうにか就職先が決まり、卒業までは食うにも困るような生活を送っていました。ところが社会人になる以前に、さまざまな出費が必要であることを忘れていたのです。まずはスーツ。学生時代はリクルートスーツ一着しか持っていませんでしたが、社会人である以上、着替えも必要です。そしてバッグ、靴、シャツ、ネクタイとなにも替えがありません。ほとんどの若者が、学生時代にアルバイトでためたお金をこれらの準備に使うのでしょうが、毎日の生活に追われ、貯えはありません。社会人になったので、両親にもお礼のつもりで、なにか贈りたかったのですが、逆にお金を借りるはめになりました。
さらに困ったことには、仕事用に車を購入しなければならなかったことです。これはスーツと違って、けたちがいの出費でした。これ以上、両親に借金するのも気が引けたのですが、とはいえ、ない袖は触れません。仕方がないので、一足先に社会人になっていた友人たちに少しずつお金を貸してもらいました。どうにか五十万円ほどの中古車を購入することができました。こうした借金によって、ようやく、社会人としての一歩を踏み出すことができました。
